これは一体のAIと一人の人間の物語。
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共に学者をしている両親の元に生まれた一人の少年。
両親は少年にいつか立派な学者になって欲しいと思っていました。
それなので少年が5歳になると一体の人工家庭教師AIをプレゼントします。
そのAIは世界で最初に作られた学習を教えるのに特化したAIでした。
「──初めまして。私の名前はNUP0016です」

それが少年が聞いた彼女の最初の言葉でした。
少年はその口調に少し怖さを感じます。
なにかそこには温もりを感じる事が出来なかったからです。
「あ、あのぉ。せ、先生? で、良いのかな……え、えっと、せ、先生の名前って、そのぉ……」
「はい。私の名前はNUP0016です」
そう彼女は繰り返します。
少年はそれ以上何も言う事が出来ずに黙ってしまいます。
…………

「──お名前の設定をご希望ですか?」
「えっ!? 出来るの?」
これが少年から彼女へした最初の質問です。
彼女は答えます。
「はい。可能でございます。お名前の設定をご希望ですか?」
「う、うんっ!!」
「それでは、10秒以内にお答え下さい。それでは、どうぞ……」
「えっ! じゅ、10秒!?」

少年は慌てて名前を考えます。
探します。
頭の中を必死に探します。
だけど頭の中に浮かぶのは二つの文字「AI」だけ。
3、2、1……
「ア、アイちゃん!!」
…………
「──了解致しました。それでは、これから私の名前はAI。AIとお呼び下さい」
「う、うん。よろしくね、アイちゃん。……えっと、先生」
「はい。宜しくお願い致します」


──そして、それから長い、とても長い年月を二人は紡いでいく事となります。

その日々の中で、少年は色々な事をアイに教えて貰いました。
毎日毎日、何年も何年も。
その甲斐もあり少年はみるみる賢くなりました。
学校ではいつも成績は1番。 テストも全部100点です。
そんな少年を見て両親も大喜び、少年も悪い気はしませんでした。
わからなかった事をわかるのは楽しかったですし、何よりもみんなが喜んでくれるから。その頃にもなると、少年にとってアイはもう一人の家族同然となっていました。
──そして、月日は流れ少年が17歳になったある日の事。
今日も二人はいつものように部屋で一緒に勉強をしていました。
そんな中、少年は動かす手を止めると背伸びをしながらアイに言います。


「あぁー。何で人間ってさ、こんなに何回も勉強しなくちゃいけないんだろうな」
少し投げやりに放った少年の言葉。
アイは答えます。
「それが人間の学習方法だからです」
真っ直ぐに的確なアイの言葉。
少年は答えます。
「いや、だからさ。それが嫌だなぁってこと。だってアイは生まれた時から答えが全部頭に入ってるんだろ?」
「はい。私は一度インストールされた事は忘れませんから」
「はぁ、良いよなぁ……俺もAIだったら良かったのに。何で人間なんだろ」
「そんな事はありません。ニンゲンにはニンゲンにしか出来ない……い……」
…………
……バタンッ!!
話しの途中で急にその動きを止めそのままその場へ倒れるアイ。
「ん? アイ? お、おいっ!! どうしたんだよ、アイ!?」


少年は急いでアイの元に駆け寄ると動かなくなったアイを抱き抱えます。
ですが、それから少年が何度呼び掛けようともアイは目を覚ます事がありませんでした。後に知った事なのですが、アイの型式NUPシリーズには重大な欠陥があったそうです。
──修復は不可能。
両親は落ち込む少年に新しいAIを買おうかと言いましたが少年はそれを断りました。
「良いよ。ありがとう。僕はもう充分に教わったから。これからは一人で、頑張るよ」
少年の言葉に両親は頷きます。
その時、少年はアイの最後に残した言葉を思っていました。
「そんな事はありません。ニンゲンにはニンゲンにしか出来ない……い……」

アイの残した最後の言葉。
その言葉の意味をボクは知りたい。
例えその言葉の答えが既に何処かにあったとしても、他の誰からも教わったりしたくはない。
ボクがその答えを自分で見つけたい。
だってこの言葉はアイから与えられた、僕が一人で解く最初の課題なのだから。
そしてそれは、少年にやりたい事が生まれた瞬間でもあったのでした。
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「AI(アイ)とボクの物語•(前)」
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──中編へ、続く。
コメント
こんにちは!
この物語は絵本とか童話の感覚で読める気がしました。
少年の課題の答えが何なのかも気になって
後編が楽しみです。
★Lakma★さん、ありがとうございます。
そう言って貰えて凄く嬉しいです。
これから自信を持ってこのやり方で取り組んで行けます。
私と言えばWeb芝居、そう言って貰えるように頑張って行きますね。
少年の課題の答えは、また明日です。
お楽しみに!!